On The Day of The End of The War (上)

今まで、カトリック新聞は左派メディアだと言って文句をたれてきました。しかし、7月23日号と30日号の2回にわたっての特集記事、『今、「戦争」と「平和」を語る』には共感しました。脱放射能を願って活動を続ける日系米国人ジャーナリストのエィミ・ツジモトさんと、「ピース9の会」の呼びかけ人で、『平和をつなぐ』(ドン・ボスコ社)の著者でもある名古屋教区の松浦悟郎司教の対談形式の記事です。

このお二人は、憲法第九条を維持したい立場ですが、これについては、私は保留中です。

私が共感したのは、下記の4点です。

1、G7広島サミットについて

G7広島サミットは、中身のない偽装行為であった。核廃絶に向けた議論がなされるわけでもなく、G7の首脳たちがアピールしたのは二つ。ロシアがウクライナに対して核兵器を使用する可能性があることのにおわせ、また、それを許さないという脅し。“ロシアの脅威”と“ロシアへの脅し”を繰り返しアピールするサミットであった。「西側」諸国の決起集会であり、「西側」メディアの報道を通して『外交的、財政的、人道的および軍事的支援』の強化を世界に求め、それを正当化するために広島のイメージを利用した。バイデンのすぐ傍に、女性兵士が『核のボタン』のバッグを持って立っていた。被爆者を愚弄している。

2、ロシアがウクライナ軍事侵攻に至った経緯

ロシアの国境沿いにあるドンバス地方は、昔から工業地帯でロシア系住民が相当数住み着いていた。米国政府の支援を背景に実業家のポロシェンコは2014年、民主的に選出された親ロシア派のヤヌコービチ大統領を倒すために、反政府派に資金を提供し、クーデターを起こす。ヤヌコービチ大統領は失脚。新たに大統領となったポロシェンコは、ドンバス地方でウクライナ語と同じく公用語だったロシア語の使用を禁止。以後、ロシア系住民は差別と排除の対象となり、これまで約1万5千人のロシア系住民が殺害されたといわれている。ロシアはドンバス地方のロシア系住民を救出しようと試みるも、治外法権でそれは不可能だった。そうした状況下、ドンバス地方のロシア系住民が「自治区」を設けようとするが、ウクライナ政府は許さなかった。これは、既にベラルーシの首都ミンスクで結ばれた協定に違反する。結果、ドンバス地方のロシア系住民は「独立」を宣言。ウクライナ政府はそれを認めず、大がかりな攻撃を準備したことで、やむなくロシアが動き、この間、ボランティアの志願兵を派兵。やがてロシア系住民の意思に沿って、この地を祖国ロシアに戻すことになった。ボランティア兵や住民たちをウクライナ政府が攻撃したことにより、ついにロシア軍がウクライナに軍事侵攻した。

3、金の流れについて

この戦争で得をしているのは、軍需産業である。米国はウクライナ戦争で軍需産業を儲けさせ、軍需産業は、米国の政治家たちに選挙資金という名目で「献金」する。アメリカの税金で足りない部分は、日本から"巻き上げよう” という考えだ。

日本は、アメリカに言われるままに武器を買わされている。総額60兆円になる。防衛費を上げるために、北朝鮮などの仮想敵国を作る。

4、メディアについて

日本の人々は、ロシアが『理由なく』ウクライナに一方的に侵攻したように信じ込まされている。ウクライナに対する同情心を煽られている。ロシアがウクライナに軍事侵攻した経緯について、良識あるジャーナリストたちは知っているが、アメリカでもヨーロッパでも黙殺される。一般のメディアが本来の役割を果たすことが出来ていない。カトリック・ジャーナリズムを強化し、カトリック信者たちが紙やインターネットを使って事実を発信するしかない。

 

かなり短く要約しました。

敵国の指導者を非人道的な狂人のように仕立て上げるのは、典型的な戦争プロパガンダです。敵国の国民は悪く言わず、むしろ独裁政権の被害者のように報道するのも、手法の一つです。ウクライナ戦争下では、特にアメリカ、イギリス、日本のメディアが極端にウクライナ側に立って、このプロパガンダを行っています。特に戦争開始直後は、ロシアが世界中を敵に回したかのように印象付けようとしていました。実際は、南半球を中心に世界の過半数の国家が、ロシアだけが悪いのではないという中立の視点を持っています。英語圏でよく使われる “Every story has two sides.” というセンテンスがありますが、戦争については、まさにこれです。

幸い現在はインターネットを通して他国の報道に触れることが出来るので、自国の大手メディアとは異なる視点からの情報を集め、自分の頭で考えることが可能です。ウクライナ戦争について、カトリック新聞が中立的な視点を紹介したのは、意外でした。そして、まだカトリック新聞も捨てたものではないと嬉しく思いました。カトリック新聞以外にも、大手メディアとは異なる切り口で報道をする小規模なメディアは沢山あります。しかし、自国の大手のテレビや新聞からしか情報をとっていない人たちの中には、驚く程それらを鵜呑みにしている人々がいます。

戦時下でなくても、私たち庶民に届くのは、嘘と真実を織り交ぜた情報です。これまでの常識に囚われず、勉強したり、情報を注意深く精査しながら、嘘と真実を見分ける感性を養っていきたいものです。

 

前の記事

雷雨